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BLOG 2021.06.19
ディテールの妙。
ちょっと大げさなタイトルをつけてしまいましたが
いや、とてもシンプルで大した話ではないんですが
こういったところにフォーカスをあてると
建築の面白さとかっていうのがご紹介できるのかなというお話。
旭工務店の事務所のバックヤード(倉庫)です。
実は、外壁のトタンを塗り替えたところなんですが、
それはたちまちおいといて
注目いただきたいのは窓、です。
細かく言うと、木の窓枠を見てみてください。
この窓枠。杉の足場板を加工して作っているんですが
この納まり方、ちょっとだけ普通ではないんです。
これは、事務所の玄関ドア、枠に注目してみてください。
おさめ方が違うの、お気づきでしょうか?
何が違うかというと、
木の枠、縦の枠と横の枠、どちらが勝っているか(伸びているか)。
玄関のほうは、縦の枠が横の枠に対して勝っていますよね。
一般的には、窓の枠でもドアの枠でも縦の枠を勝たせるのが普通です。
お近くのドアの枠、見てみてください。よっぽど特殊な事情が無ければ縦ガチになっているはずです。
昔の家なんかは、どちらも勝たせずに45度でカットして、いわゆる「留め」でおさめていることもあります。
これが留め。↓
留めは家具なんかでよく使うんですが、
要は、切小口(キリコグチ=木の断面)は見せないのがキレイな納めになるということです。
ただ、留めはすごく手間がかかるので
比較的小口が見えにくい、縦ガチ、というのが窓枠やドア枠、家具なんかでも一般的で
あえて横ガチにすることは滅多にないわけです。
さてさて、バックヤードの窓に戻りましょう。
窓の上のほうは、横を勝たせていて
下のほうは、縦を勝たせています。
このオサマリ、別にカッコ良いと思ってやっているわけではありません。
両方とも普通に、縦ガチのほうがカッコは良いと思います。
それではなぜわざわざこんな納め方をしているのでしょう。
理由はこの窓の配置。
この窓は、バックヤードの坪庭(トップライト)に面しています。
ということは、雨も降り込むわけです。
当然、この窓枠もぬれます。
雨が枠の天端にふったとき、
縦ガチと、横ガチ、どちらか雨仕舞的に有利だと思いますか?
縦ガチの場合、縦枠と横枠の継ぎ目に、直接雨が当たりますよね?
また、小口(切断面)にも
直接雨が当たりますよね?
両方とも、漏水につながりやすいポイントなんです。
また
窓の下のほうは縦ガチのほうが有利なのは
簡単にイメージできますよね・
実はここ、大工には何の指示も与えていないんです。
でも
「雨仕舞的(雨漏りしない仕事)には、この場合 横を勝たせて然るべき」という
うちの大工の自主判断で、こういう(見た目的には、違和感のある)納まり方になっているわけです。
手前味噌ですが
非常に気の利く、頼りになる大工です。
ちなみに同じ場所(バックヤード)にある他の窓がこれ。
↓
雨に当たらない場所なんで、普通に縦ガチ
普通に美しく納まっています。
まぁまさにディテール、! 地味なところですが
建物のつくりというのはいたるところに
誰かの、何らかの思いや理由が込められていたりするんですねぇ。